ランチェスター戦略とは、中小企業がマーケットで生き残っていく上で活用できる、営業やマーケティング、事業推進の方法です。この名前は第一次世界大戦の最中、戦争の勝利法を定量的に研究したイギリスのエンジニア、ランチェスター氏に由来しています。もともとは戦闘の勝敗に関する理論でしたが、のちにマーケットシェア争いの研究に応用され現在に至ります。サービス企画にも役立つ考え方だと思いますので、このブログでも紹介します。
◼ランチェスター戦略とは何か
ランチェスターは戦闘の研究などから、勝敗に関して二つの法則を導き出しました。
1)ランチェスターの第一法則
古代の刀での戦いや一騎打ちのように一人が一人と戦う場合、攻撃能力は
攻撃能力 = 武器性能 × 兵力数
A国の10人がB国の5人と戦った場合、武器の性能が同じならA国は5人が生き残る計算になります。
2)ランチェスターの第二法則
一方広いフィールドで戦う近代戦では、戦場で一対一ということはありえません。
兵士同士がランダムにぶつかり合うケースを考えてみましょう。兵力が少なくなればなるほど、残りの兵士は集中砲火を浴びることになり、負けが加速することになります。これをランチェスターの法則では、このように定義します。
攻撃能力 = 武器性能 × (兵力数の2乗)
この式をもとに計算するとA国の生き残りは8.7人となり、力の差を生かして戦闘を優位に進めていることがわかります。
つまり日本中のユーザーを相手にするサービスを作りたい、といった場合、第二法則があてはまります。
圧倒的な資本と営業を投入することが必要となり、初期にリソースをいかに投入できるかが重要になります。
このような状況では、中小企業ではどうしても太刀打ちできないということになるでしょう。
(逆に、最近ベンチャー企業の資金調達が大きな話題になるのは、あえて第二法則の世界で勝とうとすることが注目されているためとも言えます)
では、中小企業には勝ち残る方法はないのでしょうか?決してそんなことはありません。
第一法則をもう一度見てみましょう。近代戦に持ち込めない一対一のシチュエーションを作り出せば、
生き残る確率を高めることができるのです。
◼Webサービスのマーケティングに活かすランチェスター戦略とペルソナ戦略
一対一の状況を作り出すためには、「相対優位のある分野で」「局地戦を挑む」ことが大切です。
例えば貴社のサービス企画を再度洗い出してみれば、トータルのリソースで負けていても
何か一つは大企業に勝る要素が発見できるのではないでしょうか。
ランチェスター戦略では、それを徹底追求することが重要と説いています。(相対優位)
大企業がコストをかけてまで参入したがらないニッチ市場で勝負することも有効です。(局地戦)
またWebサービスのマーケティング戦略を考える上で、局地戦の究極がペルソナ戦略といえるでしょう。
ペルソナとは「仮面」を意味するラテン語で、マーケティングでは「ある商品やサービスにとって最も重要かつ象徴的なユーザー像」を指します。
これは30代男性、女性などのざっくりとしたターゲット像ではなく、
・山田 太郎さん(仮名)
・29歳男性、東京都世田谷区在住。福岡県出身、大学時代に上京。
・朝8時に起床、朝食はパン派、朝食抜きのことも多い。
・通勤は新宿の職場まで45分、電車通勤中にはスマホアプリのゲームをして過ごす。
・職業はWeb制作会社のディレクター
・禁煙にチャレンジして3年経過 …
など、サービスを利用してもらいたいターゲットを日々の行動の詳細まで記載したものです。
30代男性といった広いマーケットで大企業のサービスと争うか(第二法則)、
山田太郎さんにファンになってもらうか(第一法則、一対一)、
どちらの成功確率が高いかははっきりしていると思います。
Webサービスを企画する際は、ペルソナで指定したターゲットがどうやったらWebサービスのファンになり、
最大限に満足してくれるかを考え、究極の局地戦を挑みましょう!
◼最後に
ランチェスター戦略は「相対優位」「局地戦」といったシンプルなキーワードで、非常に実用的な理論と言えます。
多くのユーザーを集めたいWebサービスであっても、まずは一人のターゲットユーザーに喜んでもらうことから。
そう考えればアイデアも湧き出してくるのではないでしょうか?