「中小企業のWeb活用」と一口に言うけれど、いったい何をすればいいんだろう、そして、実際に他社は成果が挙がってるの?と考える方は多いと思います。 そこで今回は、データと事例をもとに中小企業のホームページ(コーポレートサイト)活用を考えてみます。
まずは、自社のホームページ開設が売上・利益を向上させているのか?というところから見ていきましょう。 最初に参考にしたのは毎年中小企業庁から発行されている「中小企業白書」。4月に2016年度版が発行されています。
白書の調査によると、製造業含む全ての産業で、IT投資(ホームページ開設や業務システム導入)を行う企業の方が、 そうでない企業と比べて売上高や利益率が高い、となっています。
製造業では投資をしている企業の売上高が22.9億円、投資をしていない企業が8.7億円。 売上高経常利益率では2.9%対2.3%で、いずれもIT投資がある企業が上回っていました。「儲かってるからIT投資ができるんでしょ?」と思われるかもしれませんが、そこも白書では調査をしています。
それによると、投資前は売上高経常利益率2.6%で横ばいを続けていた企業が、投資を進めた3年後には3.8%まで向上が見られたそうです。 一方で、特に何もしなかった企業は2.6%から3.0%で横ばいが続いています。 これを見ると、ITに投資していくことには効果があると言えそうです。
では、具体的にホームページ開設してどんな効果があったか?というアンケートに対しては、このような結果が出ていました。
回答企業のうち、
・営業力・販売力の強化 52.9%
・売上の拡大 40.4%
・顧客満足度や新規顧客、新市場開拓 37.8%
こんなデータが集まった一方で、40%程度の企業はまだIT投資が重要でないと考えているようです。
これはむしろチャンスで、中小企業こそ早め早めの投資で競争に勝ちにいきやすいといえるのではないでしょうか。
では、自社ホームページを充実させる効果があるとわかったところで、実際にはどんな成功事例があるのでしょうか?
少し昔の事例になりますが、中小製造業のホームページ活用の取り組みを研究した麗澤大学(土井(2004))の研究がありました。 以下の4事例は土井(2004)からの要約引用です。
1) 自社の品質、価値観を潜在顧客に届けて操業度アップ
この企業は、技術へのこだわり(ミクロン単位の正確性)を開示することで顧客に安心感を持ってもらおうという取り組みをしていました。実際にこの企業の稼働率は上昇し、二交代制の操業になったようです。(記事筆者:発注側の購買担当者もインターネット検索をしないということはあり得ないので、事前情報が多ければ商談の確率も 高まってくると予想されます)
2) 自社の半製品が一般顧客に売り出せることがわかり顧客層拡大
自社製造している製品の材料(磁石)が、一般顧客にも売れるとわかったこの企業では、インターネット通販で売り出し開始、子供向けページなども展開され、個人向けが2割にまで成長したそうです。
3) 受注をインターネット経由に一本化、中間費を削減したことで利益率が向上
自社が受注可能な状況であるかを開示することで、作業量や作業価格の交渉の手間を省くことに成功しました。(記事筆者:サービス業などの予約管理に近いものと言えそうです。)
4) ネットでの商品紹介と宅配便の併用で売上アップ
機械工具店の事例では、関西だけだった取引先が拡大し、売上の80%がインターネット経由になったそうです。
(以上土井(2004)より)
上記研究はいまでは古典的の部類に入るかもしれませんが、最近ではホームページ活用の幅はより広がっています。
特殊性の高い製品であっても、例えばチャット形式でのカスタマーサポートや、オンライン商談など、取引を効率化する手段は 数多く出てきています。これを機会に自社ホームページの充実を図ってみてはいかがでしょうか。
このブログでは、今後も中小企業のホームページ活用に関する事例、研究を随時リサーチしていきます。
参考資料・文献
土井正「生産財マーケティングにおけるインターネッ トの活用〜中小製造業の事例から〜」麗澤大学紀要 第79巻 2004年12月
中小企業白書(2016年版)